任意売却では多くの場合、売却損が出ます(売却価格<購入価格+諸経費)。
マイホームの売却で損失が出た場合、譲渡所得税・住民税はかかりません。
さらに、一定の条件を満たせば、その損失を他の所得(給与所得や事業所得など)から差し引くことで、納めた税金が還付されたり、翌年の住民税が軽減されたりする可能性があります。
譲渡所得税・住民税について
原則
不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課税されるのが譲渡所得税・住民税です。売却損が出たということは、譲渡所得がマイナスになるため、これらの税金は発生しません。
損失の活用(特例)
マイホームの売却で損失が出た場合、以下の特例を利用できる可能性があります。
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
この特例は、買い替えをしない場合でも利用できる可能性があります。
内容
売却したマイホームの譲渡損失を、その年の他の所得(給与所得や事業所得など)と相殺(損益通算)できます。
損益通算しても控除しきれない損失は、売却した年の翌年以後3年間にわたって繰り越して控除することができます。これにより、所得税の還付を受けたり、翌年度の住民税が減額されたりします。
主な適用要件 (2025年5月時点、2025年12月31日までの譲渡に適用)
- ご自身が住んでいたマイホームであること。
- 売却した年の1月1日において、そのマイホームの所有期間が5年を超えていること。
- 譲渡契約締結日の前日において、そのマイホームに係る償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること。
- 売却価格が住宅ローンの残高を下回っていること(必ずしもローン残高すべてをカバーしていなくても、損失が出ていれば対象となる場合があります。詳細は税務署や税理士にご確認ください)。
手続き
この特例の適用を受けるためには、必ず確定申告が必要です。
その他の税金について
売却損の有無にかかわらず、不動産売却時には以下の税金がかかります。
印紙税
不動産売買契約書に貼付する印紙代です。契約金額によって税額が異なります。
(例:契約金額が1,000万円超5,000万円以下の場合、軽減措置適用で1万円 ※2027年3月31日まで) 電子契約の場合はかかりません。
登録免許税
売却したマイホームに住宅ローンが残っており、抵当権が設定されている場合、その抵当権を抹消するための登記費用(登録免許税)がかかります。
通常、不動産1個につき1,000円です(土地と建物なら2,000円)。これは売主負担となります。
所有権移転登記の登録免許税は、通常買主負担です。
消費税
個人がマイホームを売却する場合、建物部分についても消費税はかかりません。土地はもともと非課税です。
まとめと重要な注意点
譲渡所得税・住民税
マイホームの売却で損失が出た場合、これらの税金はかかりません。
損失の活用
上記の「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の要件を満たせば、他の所得にかかる税金が軽減される(還付される)可能性があります。必ず確定申告を行ってください。
2024年中に売却した場合の確定申告は、2025年2月17日から3月17日までです。 2025年中に売却した場合の確定申告は、2026年の同時期になります。
取得費の確認
譲渡損失を正確に計算するためには、売却したマイホームの購入時の売買契約書や諸費用の領収書など、取得費を証明する書類が非常に重要です。
これらが見当たらない場合は、実際の損失額より少なく計算されてしまう(または損失が認識されない)可能性があります。
専門家への相談
税金の計算や特例の適用要件は複雑です。ご自身の状況で確実に特例が利用できるか、また、どのような書類が必要かなど、税務署や税理士にご相談いただくことを強くお勧めします。
売却損が出た場合でも、手続きをきちんと行うことで税金の負担を軽減できる可能性がありますので、諦めずにご確認ください。