差し押さえが行われる主な理由は、債権者が持つ正当な権利(お金を返してもらう権利など)を、債務者が自主的に果たしてくれない場合に、法的な強制力をもって実現するためです。
具体的には、以下のような状況で差し押さえが行われます。
差押の目的
金銭の支払いが滞っている場合(金銭債権の回収)
- 貸したお金が返ってこない(貸金,住宅ローンの滞納が該当します)
- 税金が納められていない(国や地方公共団体による滞納処分)
- 商品の代金が支払われない(売掛金)
- 慰謝料や養育費が支払われない
- 損害賠償金が支払われない
- 家賃が支払われない(賃料)
債権者は、これらの金銭を受け取る権利(債権)を持っています。しかし、債務者が約束通りに支払ってくれない場合、いくら請求しても応じてもらえないことがあります。
そのような場合に、裁判所などの公的機関の力を借りて、債務者の財産を強制的に確保し、そこから支払いを受けるために差し押さえが行われます。
約束された義務が果たされない場合
お金の支払いに限りませんが、多くの場合、差し押さえは金銭債権の回収を目的としています。
法的手続きによる公平な権利実現のため
特に複数の債権者がいる場合、差し押さえという法的手続きを経ることで、各債権者は法律に基づいた優先順位や割合で公平に債権の回収(配当)を受けることができます。
特定の債権者だけが有利になるような事態を防ぐ意味合いもあります。
差し押さえは最終手段
通常、債権者はまず話し合いや督促によって、債務者に任意での支払いや義務の履行を求めます。
それでも解決しない場合に、最終的な手段として法的手続きである差し押さえが選択されることになります。
つまり、差し押さえは、「約束を守らない相手から、正当な権利を持つ人が、法律の力を借りてその権利を実現するための強制的な手続き」と言うことができます。
差押の種類
差押には、その目的となる財産の種類や手続きによっていくつかの種類があります。主なものは以下の通りです。
目的となる財産による分類
不動産執行における差押
土地や建物などの不動産を対象とする差押です。登記によって公示され、競売などの手続きを経て換価されます。
住宅ローンの滞納による、裁判所への競売申立が該当します。
動産執行における差押
現金、貴金属、家財道具、商品在庫など、不動産以外の有体物を対象とする差押です。
執行官が直接占有したり、封印を施したりします。差押禁止動産(生活に不可欠なものなど)が定められています。
債権執行における差押
債務者が第三者に対して有する債権(金銭の支払いを求める権利など)を対象とする差押です。
- 給与差押
- 債務者の勤務先から支払われる給与の一部を差し押さえます。差押禁止範囲が定められています。
- 預貯金差押
- 債務者が金融機関に有する預貯金を差し押さえます。
- 売掛金差押
- 債務者が取引先に対して有する売掛金を差し押さえます。
その他、賃料債権、貸付金債権なども対象となります。
住宅ローンの滞納においても、債権執行による差押がされるケースがあります。
その他の財産権に対する差押
上記以外にも、特許権、著作権、株式などの財産的価値のある権利も差押の対象となり得ます。
差押の根拠となる手続きによる分類
強制執行としての差押
確定判決、和解調書、調停調書、支払督促、執行認諾文言付公正証書などの債務名義に基づいて行われる差押です。
民事執行法に基づき、債権者が債務者の財産を差し押さえて債権の回収を図ります。
担保権の実行としての差押
抵当権や質権などの担保権を有する債権者が、その担保権に基づいて目的物を差し押さえる場合です。
住宅ローンは融資時に、担保になる不動産に抵当権が設定されています。
国税滞納処分としての差押
税金の滞納があった場合に、国税徴収法に基づいて国や地方公共団体が滞納者の財産を差し押さえるものです。
対象になる税金
- 国税の例
- 所得税
- 法人税
- 消費税
- 国税に準ずる税の例(国が徴収するもの)
- 地方消費税の国庫納付金
- 復興特別所得税
- 国税ではない税金の例(これらは、国税庁ではなく地方自治体が徴収するため、差押えは市町村や都道府県によるものになります)
- 住民税
- 固定資産税
- 軽自動車税
- 事業所税
- 国民健康保険料(実際は税扱い)
ただし、これらも滞納すると地方自治体が独自に差押え処分を行います(地方税滞納処分)。
特に注意すべき点
差押禁止財産
法律により、債務者の生活維持に必要な一定の財産(生活必需品、一定額以下の給与や年金など)は差押が禁止されています。
差押の競合
複数の債権者が同一の財産を差し押さえようとする場合があり、その際の優先順位や配当手続きが問題となることがあります。
差押は、債権回収のための強力な手段ですが、法律で定められた手続きに従って行われる必要があります。
ご自身の状況に応じて、どの種類の差押が関係するのか、またどのような対応が必要になるのかについては、専門家にご相談いただくことをお勧めします。