不動産会社の査定
査定の種類
不動産会社の査定には、大きく分けて以下の2種類があります。
簡易査定(机上査定)
不動産会社が実際に物件を訪問せず、データのみに基づいて行う査定です。
物件の住所、土地・建物の面積、築年数、間取り、周辺の類似物件の売出し事例や成約事例、公示地価などの情報を基に、おおよその査定額を算出します。
短期間で査定結果が得られるため、手軽に相場を知りたい場合や、まだ売却を本格的に検討していない段階で利用するのに適しています。
実際に物件を見ないため、あくまで目安として考える必要があります。
訪問査定(詳細査定)
不動産会社の担当者が実際に物件を訪問し、現地を詳細に調査して行う査定です。物件内部、周辺環境、法的状況などを確認します。
権利証(登記識別情報通知)、建築確認済証、検査済証、設計図面、測量図、修繕履歴、管理規約(マンションの場合)なども査定の重要な資料となります。
簡易査定よりもはるかに精度の高い査定額が期待できます。実際の売却価格に近い価格を把握できるため、本格的に売却を進める際に重要となります。
任意売却における査定の目的と役割
不動産会社の査定は、以下の目的と役割を持っています。
売却価格の目安を把握する
所有物件がいくらで売れそうかを知ることで、任意売却を進めるうえで重要な指標となります。
住宅ローンの残債務額を満たすかどうかがポイントです。
適切な売出価格の決定
査定価格を参考に、債権者と交渉し実際に不動産を売り出す価格を決定します。
債権者は、担保物件の売却から可能な限り多額の回収を図るため、高めの価格設定を求めます。高すぎると売れ残る可能性があり、適切な価格設定が重要です。
不動産会社との媒介契約の締結
媒介契約の種類
不動産会社と正式に売却活動を依頼する契約を締結します。媒介契約には以下の3種類があります。
- 専属専任媒介契約: 1社のみに依頼し、売主が自分で買主を見つけることもできません。
- 専任媒介契約: 1社のみに依頼しますが、売主が自分で買主を見つけることは可能です。
- 一般媒介契約: 複数の不動産会社に依頼できます。
任意売却では、債権者の指示により、専属または専任媒介契約を締結することになります。債務者の個人情報をやり取りすることになるため、債権者は多くの不動産会社と交渉することを望みません。
売却活動の開始
広告活動
インターネットのポータルサイト、自社ホームページ、チラシなどで物件情報を公開し、購入希望者を募ります。
内覧(見学)の実施
購入希望者からの問い合わせがあった場合、内覧(物件の見学)に対応します。居住中の場合は、室内をきれいに保つなど、内覧への準備が必要です。
買主との売買契約の締結
購入申し込み・交渉
購入希望者が見つかると、購入申込書(買付書)が提出されます。その後、売買価格や引渡し条件などについて、買主と交渉を行います。
債権者の承認
売主負担の売却に伴う諸費用(仲介手数料・登記費用等)、他の債権者(滞納している税金やマンション管理費用等を含む)への配分の金額を確定します。
売買価格と上記金額について債権者へ申請し、承認を得ます。債権者が複数の場合は、全ての債権者の承認を得なければなりません。
任意売却の業務において、最も重要な工程です。
重要事項説明と売買契約の締結
買主は、宅地建物取引士から、物件に関する重要事項の説明を受けます。売主と買主が合意した契約内容で、不動産売買契約書に署名・捺印し、手付金を受領します。
残代金受領・物件の引渡し
残代金決済
売主が買主から売買代金の残金を受け取ります。通常、金融機関で売主・買主・債権者・不動産会社の担当者、司法書士が集まって行われます。
抵当権抹消手続き
このタイミングで売却代金から住宅ローンを返済し、抵当権抹消の手続きを行います。
所有権移転登記
買主への所有権移転登記の手続きを行います。
鍵・書類の引渡し
買主に物件の鍵や関係書類を引き渡します。
固定資産税等の清算
引渡し日を基準に、固定資産税などを日割りで清算します。
売却後の住宅ローンの返済方法
任意売却では物件の売却後も住宅ローンが残ります。その返済方法について、債権者と交渉して取り決めます。
家計の収支を基に、毎月返済が可能な金額を交渉します。もともとの住宅ローン返済額にとらわれず、売却後の生活状況を考慮することになります。
この交渉時期は債権者によって異なり、残代金決済前から始めるケースや、決済完了の後日に行われるケースもあります。
これらのステップを踏むことで、安心して不動産売却を進めることができます。不明な点があれば、その都度、担当者にご確認ください。