不動産競売は、住宅ローンなどの借入金の返済が滞った場合などに、債権者(金融機関など)の申し立てにより、裁判所が不動産を差し押さえ、強制的に売却して債務の回収を図る手続きです。
ここでは、その仕組みについて順を追って説明します。
競売が開始されるきっかけ
最も一般的なのは、住宅ローンなどの不動産を担保とした借入金の返済が滞るケースです。
返済が一定期間(概ね5~6ヶ月程度)滞ると、金融機関などの債権者は債務者に対して借入金の一括返済を請求します(期限の利益の喪失)。
それでも返済がされない場合、債権者は連帯保証人や保証会社に請求し、保証会社が債務者に代わって残債務を一括返済する「代位弁済」が行われます。代位弁済が行われると、保証会社が債権者に代わって不動産を競売にかける権利を得ます。
また、住宅ローン以外の借入金や、税金、マンションの管理費などを滞納した場合にも、債権者が裁判所に申し立てて強制的に不動産を競売にかける「強制競売」となることがあります。
競売の流れ
競売開始の決定
債権者からの申し立てを受けた裁判所は、申し立てに理由があると判断すると、競売開始決定の決定を下し、所有者(債務者)に通知します。
これにより、対象の不動産は差し押さえられ、所有者は自由に処分することができなくなります。
現況調査と評価
競売開始決定後、裁判所の執行官が不動産の現況調査を行います。この調査では、建物の状況、土地の利用状況、占有者の有無などが確認されます。
また、不動産鑑定士が不動産の評価を行い、「評価書」を作成します。これらの調査結果は、「現況調査報告書」「評価書」「物件明細書」としてまとめられ、これらは「3点セット」と呼ばれ、入札希望者への情報提供のために公開されます。
売却基準価額と買受可能価額の決定
評価書に基づいて、裁判所が「売却基準価額」を決定します。これは、その不動産を競売で売却する際の目安となる価格です。
さらに、この売却基準価額から2割を差し引いた額を「買受可能価額」として定めます。入札参加者は、この買受可能価額以上の金額で入札する必要があります。
情報の公告と入札期間
3点セットなどの物件情報は、裁判所の掲示板やインターネット上の不動産競売物件情報サイト(BIT)などで公告され、一般に公開されます。
公告と同時に、入札を受け付ける期間(通常1週間程度)が定められます。
入札と開札
入札を希望する人は、定められた期間内に、裁判所が指定する方法(通常は郵送または持参)で入札書と定められた保証金を提出します。
入札期間終了後、「開札」が行われ、最も高い価格で入札した人が「最高価買受申出人」となります。
任意売却の業務は、入札開始日までにすべて完了する必要があります。当社では依頼を受けた任意売却の全件を、期日までに完了し成功しています。
売却許可決定
最高価買受申出人が決定すると、裁判所は、その人が不動産を買い受けることが適切であるかを審査し、「売却許可決定」または「売却不許可決定」を下します。
売却不許可決定となるのは、手続きに瑕疵がある場合などに限られ、通常は売却許可決定となります。
代金納付と所有権移転・引渡し
売却許可決定が確定した後、最高価買受申出人は定められた期限までに裁判所に買受代金を全額納付します。代金が納付されると、不動産の所有権は最高価買受申出人に移転します。
その後、所有権移転登記が行われ、物件の引渡しが行われます。
競売のメリット・デメリット
競売物件は、市場価格よりも低く設定された売却基準価額から入札が始まるため、比較的安価(相場の7割程度)に不動産を取得できる可能性があります。また、裁判所が主体となって手続きを進めるため、取引の透明性が高いという側面もあります。
一方で、競売物件は事前に内部を十分に確認できないことが多く、物件の状況(損傷、残置物など)や、前の所有者や占有者がいる場合の立退き交渉などにリスクが伴います。また、契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)が免責されているなど、通常の不動産取引とは異なる注意点が多くあります。
このように、不動産競売は債権回収のための法的な手続きであり、市場での通常の不動産売買とは異なる仕組みで進行します。